感想温泉はてな亭

諸々、ふれたもの、こと、に関しての感想を記していきます。

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大西巷一先生『涙の乙女 大西巷一短編集』双葉社 感想。

『乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ』でおなじみ、
大西巷一先生の短編集です。収録された作品、ほとんどはヨーロッパが舞台なのですが、
ひとつ、表題作の『涙の乙女』はインカ帝国のお話、と、
一風変わった感じで……とは言っても、
スペインに侵攻されるのでヨーロッパ関連、ではありますけれども。


どのお話も読み応え十分で。
一部、見開き推奨な作品も……
最初はKindle Voyageで読んだのですが、
そのあとPCで読み直してみると見開きページの迫力に圧倒され。
感動が違いました。
Kindle端末は手軽さが魅力なのですが、
見開き表示できる環境で読み直すと
作品の一味違った魅力が現れたりしますので油断できません。


それぞれの短編のあとに収録されている解説も
お話をより楽しむために効果的で。
おかげで読み直す際にはちょっと違った視点をもって観られるかな、と。
参考文献も挙げられていますので、
興味さえあればより深く知ることも可能で。


ということで、
各収録作品の感想を少し。

■「男装の殺人鬼 マネット・ボヌール」

恋人に裏切られ、広く男に復讐を誓った女性のお話。
憎しみの深さがなんとも……
最初は割と純情な風も感じるものの、
一気に反転して殺人に向かう様が重いです。


架空の人物もお話の中で上手く活かされていて。
マネット・ボヌールの魅力が増しているかと思った次第です。
……この人物がいなければ、
ホント、殺人鬼のお話、で終わってしまったのかも。

■「ブルターニュの雌獅子〜復讐のジャンヌ」

フランス国王 フィリップ六世に旦那を反逆罪、として処刑され、
その無念を晴らすべく奮闘するジャンヌ・ド・ベルヴィル。
全てを賭けて、イングランドからの支援も取り付けて闘う様は、
勇ましくもどこか悲しいものがあり。
イングランド王絡みのエピソードはどうなのかしらん、
とは少し思ったものの、ジャンヌの執念的なものを感じたので
これはこれで……という印象でしょうか。
お話の締めはなんとも辛いものでしたが、
こういう事がないと手を引けなかったのかなぁ、とも。

■「涙の乙女〜或るインカ皇女の悲劇」

大きく時代の波に翻弄されてしまう皇女。
ですが、ただでは済まない強さがあるのは、
さすがは皇女、で。
ただ……全般的に悲劇で。
インカ帝国の滅びにまつわるお話ですので当然、といえばそうなのですが。
最後は少しだけ救われた感じも。


参考文献が面白そう。
けれど、Kindle版がないのよねー。

ドーニャ・フランシスカ・ピサロの生涯 1534‐1598―征服者(コンキスタドール)ピサロの娘(メスティーサ)

ドーニャ・フランシスカ・ピサロの生涯 1534‐1598―征服者(コンキスタドール)ピサロの娘(メスティーサ)


■「豚王」

初投稿作、デビュー作。
舞台の想定はあるものの、すべて架空のもの、とのこと。
しかしながら、収録作の中では、
個人的には一番面白かったかも、です。
見開き推奨はこちらの作品。


豚王とローダンの、どこか屈折した関係。
大暴れしながらも豚王の気持ちが少し変わっていくような……
何かが心に引っかかる、そんな作品になっているかと思います。


こういう読後感の作品、好きです。

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